ERPとは?ERPの目的と効果的な活用方法を正しく理解する

組み立て工程

ERPとは、「基幹システム」や「システムの集合体」と思っていませんか? ERPの本当の意味を知らないとERPのメリットを引き出せないどころかデメリットとなることもあります。しっかりとERPのメリットを引き出すためにもERPの意味とメリットを正しく理解していきましょう。

ERP(enterprise resource planning)とは?

 

ERP(Enterprise Resource Planning)とは、企業活動で生まれる様々な情報(購買、生産、販売、会計、人事情報等)を収集し、最適な資源(リソース)計画を管理することにより、費用を抑え、収益の獲得機会を増やし、利益を大きくすること

 

ERPは、もともと工場の製造ラインの情報を収集し、ヒト・モノ・カネという資源を効率的に活用するMRP(Material Requirements Planning)を企業活動全般に拡張させたものでした。このMRPという概念が誕生した当初は、システムを用いていた訳ではなく、単に製造ラインを観察し、問題箇所を特定し、その問題を解決させるために資源を調整するという仕組みを構築することそれ自体をMRPと呼んでいました。

つまり、この仕組み(MRP)をシステムで構築するのが効率的だっただけで、MRPはシステムで構築されることが前提の概念ではなかったのです。これはERPにおいても同様です。

現代では、企業活動の”あらゆる情報”が”リアルタイム”に連携されるシステム自体がERPと捉えられることが多々ありますが、これはERPの本来の目的を考えると、システム化はERPを構築するための一つの手段でしかないのです。

ポイント!
ERPとは、様々な情報を元に資源計画の最適化を目指すこと。システムはERP構築の手段でしかない。

ERPの効果的な活用方法と注意点

利益の追求

ERPの目的が「企業活動で生まれる様々な情報を収集し、最適な資源(リソース)計画を管理することにより、費用を抑え、収益の獲得機会を増やし、利益を大きくすること」ということを考えるとERPの効果的な活用方法が見えてきます。

ERPの最適な活用方法には下記の事例が挙げられます。

ERPを効果的に活用した事例

営業からの配送依頼をAIを駆使し、即座に物流業者を選定、配送依頼を連携することにより、人件費の削減と物流費用の低減を実現した

在庫残数や入荷予定数を精緻に管理し、営業先から即座に注文できるようにすることで取引獲得の機会を増大させた

これらは、ERPをシステムで実現することにより、効果的に企業の競争力を向上させた事例となります。

しかし、効果的な活用事例がある一方、ERPの目的を見失ってしまった事例もあります。

・ERPの目的を見失ってしまった事例

集計しうるあらゆる情報をリアルタイムで連携し、売上実績や原価情報を定時で社員に公開するようにした

これは、即座に集計した情報をいかに使っていくのかを熟考する前に、情報がフレッシュなことに越したことはないという理由だけでシステムを構築してしまった事例です。

一見、企業の情報活用に繋がりメリットがあるように思えるのですが、いざ作りきってみると効果的な活用方法も分からず、誰も求めてもいなかったので、全く活用されないという結果に繋がります。それどころか、作ってしまったシステムをなんとか活用しようと企業の競争力に何も影響を与えない管理資料が増え、報告頻度も増え、生産性を逆に落としているような事例も聞いたことがあります。

また、様々な情報をリアルタイムに連携するのは、入力する社員に負荷がかかるだけでなく、システムの複雑度も高くなるため、確実に保守性が低下し、長期的にシステム運用コストを引き上げてしまいます。

そのため、ERPをシステムに実現するにあたっては、機能を実現することで得られる効果とシステムを複雑にすることによるリスクを常に考慮しましょう。ERPの成り立ちからも分かるように、ERPはシステムで実現しないという手段だってあるので、システム化することに囚われないようにしましょう。

ポイント!
ERPは、システム化という手段に縛られるものではなく、情報を駆使して、企業の利益を大きくするという視点が重要です。

ERPの潮流と今後の展望

時の流れ

ERPを理解する上でこれまでのERPの潮流と今後の展望を理解しておきましょう。序盤は世界的な流れとなりますが、後半は日本でのERPの発展に焦点を当てた形となります。

  • STEP.1
    1970年代:MRPの誕生
    世界的に工業と経営学が発展して、いかに効率良く製品を製造できるかが注目されていた時代の要請に応える形で、製造ラインの効率的な管理手法として、MRPが誕生しました。また、メインフレームによる基幹業務のシステム化が進んだ時代でもあり、SAP社の「R/1」が誕生したのもこの時代でした。

    その結果、MRPはシステムと密接に絡んで発展していくことになります。

  • STEP.2
    1980年代:MRP Ⅱへの発展
    製造ライン内のモノの流れを中心に管理する手法としてMRPから、製造ライン外のモノの流れ、設備の生産能力、労働者の勤怠までを含む管理範囲を広げたMRPⅡに発展しました。

    そのため、MRPが「Material(資材) Requirements(所要量) Planning(計画)」の略だったのに対して、MRPⅡは「Manufacturing(製造) Resource(資源) Planning(計画)」の略語となっております。

  • STEP.3
    1990年代:システム化の促進とERPへの発展
    パソコンが登場したことにより、システムが一般的な従業員にも身近になったこと、また手探りで発展してきたMRP・MRPⅡが部分最適に発展してきたことを契機に、販売情報、会計情報や人事情報などまでを一貫して管理することができるERPが誕生しました。

    また、世界的に成長が鈍化している現状を受けて、BPR(Business Process Re-engineering)という業務の流れやルールを見直す活動が活発になりました。

  • STEP.4
    1990年代後半:ERPパッケージの台頭
    BRPとERPのシステム化が活発化したことにより、ノウハウが溜まったシステムベンダが様々な企業のベストプラクティスが詰まったERPパッケージを提供し始めました。しかし、日本ではバブル崩壊後ようやくBPRが注目され始めた時期で、この時代に提供されるERPパッケージは日本の業務習慣に対応しきれておらず、ERP導入に失敗する企業が続出しました。
  • STEP.5
    2000年代:ERP導入に向けた取り組みが活性化
    1990年代にERP導入に失敗する企業が相次いだ事で、国家レベルで産業発展への課題とされ、IPA(独立行政法人 情報処理機構)などを中心に日本におけるERP導入の研究や手法の確立が活発化しました。

    また、この流れを好機と見た企業が国内の業務習慣に対応したERPパッケージの開発に取り組みました。

  • STEP.6
    2010年代:ERP導入の促進と飛躍的な技術進歩
    2000年代に行われたERP導入への取り組みが功を奏し、2010年代には日本でもERPを導入する企業が増加し、2019年現在時点でも増加傾向を維持し、市場規模1,200億円迄発展しました。

    その結果、クラウド、ビッグデータ、AIの組み込みなどIT業界のホットワードをERPに取り込む事例が相次ぎ、ERPの活用方法が企業の競争力に直結する時代へと変貌を遂げました。

  • STEP.7
    2020年以降:激動の時代に追随するERPの追究
    取り巻く環境や技術が目まぐるしく進歩していく昨今、日本における技術者不足も目立つようになり、この激動の流れにシステムが追随できない事例がすでに発生しています。そのため、今後は、変動する外的要因に柔軟に対応できるシステムを持つ企業と対応できない企業の差が大きく出てくることが推察できます。

    この流れはすでに始まっていて、最近のERP再構築の案件では、柔軟で迅速に変更でき、拡張性の高いシステムの構築を掲げる企業が増えてきています。しかし、実際にその目的を達成するための打開策が見出せず、結局、現行システムの焼き直しに留まっています。

    そのため、今後は、この柔軟で迅速に変更でき、拡張性の高いシステムの構築をいかに実現するか、ERP導入企業・システムベンダ両者で協力して、この課題に取り組んでいく必要があります。

ポイント!
日本でのERP導入が本格的に進んでから、まだ10年程度しか経っていません。まだまだ改善の余地が残されていることを念頭にERPシステムの在り方を見直してみましょう。

あとがき

ERPへの課題を残す形で終えましたが、日本企業がより効率よくERP導入することにより、日本経済が発展し、働き方改革の促進されるように、今後もERPについての記事を発信していこうと思います。

日本のITは欧米や中国に比べて数十年遅れているとの研究結果を良く目にしますが、ERPの発展は様々なIT技術の発展・導入にも直結していきます。この現状の打開に少しでも寄与できれば、嬉しいです。

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